前回、こういう話をしました。
「人間は進化していない」という話がピンとこないのは、学校の歴史の授業のせいです、と。
教科書のページの配分と、実際に人間が過ごした時間の配分は、まったくの別物だからです。
今回は、その「実際の時間の配分」を出します。
先に、このシリーズの結論をもう一度置いておきます。
いまの人間のスペックは、文明ができてから作られたものではありません。
もっと昔の、狩猟採集の時代に作られたものです。
そのスペックと、いまの生活とのギャップが、慢性的なしんどさの正体です。
この記事では、人類の歴史600万年を1年のカレンダーに縮めます。
結論を先に言うと、スマホがあるのは、大晦日の最後の100秒だけです。

人類の歴史600万年を、そのまま数字で並べてみる
まず、縮める前の素の数字です。
| 出来事 | 何年前 | 600万年に占める割合 |
|---|---|---|
| 人間の系統がチンパンジーの系統と分かれた | 約600万年前 | ここがスタート |
| いまの形の人間(ホモ・サピエンス)が現れた | 約30万年前 | 残り5% |
| 畑を耕して食べ物を作るようになった | 約1万年前 | 残り0.17% |
| 江戸幕府が始まった | 423年前 | 残り0.007% |
| 産業革命が始まった | 約250年前 | 残り0.004% |
| iPhoneが発売された | 19年前 | 残り0.0003% |
数字を並べても、たぶん何も感じません
600万年、30万年、1万年、423年、250年、19年。
こうやって並べても、あまりピンとこないはずです。僕もそうでした。
桁が違いすぎると、頭が処理をあきらめます。
パパスタ600万年も30万年も、どちらも「すごく昔」で終わってしまう。それでは比べたことになりません。
だから1年に縮めます
1年のカレンダーなら、体で分かります。
7月と12月31日の差なら、誰でも分かりますよね。
夏休みと大晦日です。まったく違う。
600万年を1年に縮めると、1日が1万6400年になります
600万年を365日に割ると、こうなります。
図1:人類の歴史600万年を1年に縮めたときの換算。
1時間で685年、1分で11年です
1時間が685年です。
鎌倉時代の終わりごろから今日まで、くらいの長さが、このカレンダーの1時間になります。
1分が11年です。
小学1年生が入学して、高校を卒業するくらいの長さ。それがたったの1分です。
この換算だけ、頭に置いて読み進めてください。
人類史カレンダー|1月1日から12月31日まで
では、進めていきます。
図2:人類の歴史600万年を1年のカレンダーに縮めると。
1月から11月まで|ほとんど何も起きません
1月1日、0時ちょうど。 ここが600万年前です。
人間の系統がチンパンジーの系統と分かれたあたり。
2本足で歩き始めても、まだ脳は小さいままです。
- 7月中旬 … ホモ属(僕らと同じグループ)が登場します。石器を使い始めたころです
- 9月中旬 … ホモ・エレクトスが現れます。長い距離を歩いて、走れる体になった段階です
1年の半分が過ぎて、やっとここです。



1年のうちの7月中旬まで、僕らと同じグループの人間すら出てきていません。600万年のうち、半分近くはその手前の時間です。
12月13日 夕方6時|いまの形の人間が登場します
いまの形の人間、ホモ・サピエンスが現れるのは、12月13日の夕方6時です。
ここまでで、1年の95%が終わっています。
人類の歴史のほとんどは、僕らと同じ形の人間が生まれる前に、もう過ぎているということです。
その後、12月27日の夕方6時ごろにアフリカを出て、世界へ広がり始めます。
12月31日|ここからは時間で追いかけます
| 大晦日の時刻 | 起きたこと |
|---|---|
| 午前2時ごろ | 日本で縄文時代が始まる(土器を使い始めたころ) |
| 午前9時24分 | 農耕のはじまり |
| 午後4時ごろ | メソポタミアで人類最初の都市が生まれる |
| 午後4時30分ごろ | 文字が発明される |
| 夜8時30分ごろ | 日本で弥生時代が始まる |
| 夜11時23分 | 江戸幕府が開かれる |
| 夜11時38分 | 産業革命が始まる |
| 夜11時46分 | 明治維新 |
| 夜11時57分 | インターネットが家庭に入ってくる |
| 夜11時58分20秒 | iPhoneが発売される |
| 0時00分00秒 | 今日 |
農耕が始まったのは、大晦日の朝9時24分です
ここが大きな分かれ目です。
農耕が始まった時点で、残りは14時間半しかありません。
定住して、穀物を貯めて、村を作って、国を作って、戦争して、機械を発明して。
歴史の教科書に出てくることは、全部この14時間半のなかで起きています。
スマホがあるのは、最後の100秒だけです
1年のうち、スマホがあるのは、最後の100秒だけです。



1分40秒。カップ麺ができる前に終わります。
1月1日から12月31日の夜11時58分まで、人間はスマホを持っていませんでした。
持ったのは、本当に最後の最後です。
江戸時代からでも、最後の37分です
- 江戸時代の始まりから今日まで … 37分
- 産業革命から今日まで … 22分
37分というと、テレビドラマ1本ぶんもありません。
その37分のなかに、江戸時代の260年と、明治から今日までの160年が、全部入っています。
学校で習ったのは、大晦日の夜の部分です
前回の話とつながってきます。
僕らが学校で何時間もかけて習ったのは、この12月31日の夜の部分です。
大和政権も、平安も、鎌倉も、戦国も、江戸も、明治も、全部この日の夜に入っています。
テストに出た年号は、ほぼ全部、大晦日の夜の出来事です。
では、人間のスペックはいつ作られたのか
答えは、12月13日の夕方から、12月31日の午前9時24分まで。
およそ18日間です。
図3:スペックが作られた18日間と、僕らが生きている100秒。
この18日間ずっと、人間は歩いて食べ物を探して、日が沈んだら寝ていました。
18日間で決まった4つのこと
甘いものや脂っこいものをおいしいと感じるのは、この18日間、それがめったに手に入らなかったからです。見つけたときに食べきる個体が、生き残ってきました。
命の危機に対して、数分で全力を出せる仕組みが要りました。何か月も続く職場の不安に耐える仕組みは、この18日間では要らなかったんです。
明かりがたき火しかない18日間でした。だから、光が消えることが眠る合図になっています。
この18日間、まわりにいたのは、せいぜい100人くらいの集団です。数千人の顔と名前を覚える必要が、一度もありませんでした。
そして僕らは、その設計のまま最後の100秒を生きています
100秒のあいだに、手のひらに世界中の情報が入ってきました。
食べ物は24時間いつでも買えるようになりました。
夜も部屋は明るいままです。
歩かなくても、どこへでも行けるようになりました。
体のほうは、何も変わっていません。変わる時間がなかったんです。
進化は、世代が入れ替わることでしか進みません。
100秒のあいだに入れ替われる世代の数は、たかが知れています。


慢性的な心身のダルさは、この「ズレ」から来ています
ここまでを、ひとつにまとめます。
人間のスペックは、狩猟採集の時代から変わっていません。
1年のうち、最後の100秒で作り変わることはありません。
でも、その100秒のあいだに、世の中のほうは爆速で変わりました。
100秒のあいだに変わった3つのこと
19年前にiPhoneが出て、いまは手のひらから世界中とつながります。
歩いて3分のコンビニに、24時間、糖と脂が並んでいます。
車があって、電車があって、エレベーターがあります。1日じゅう、ほとんど歩かなくても生活が回ります。
じゃあ、どうなったか
このズレによって、不調が起きています。それが、慢性的な心身のダルさの正体です。
- 寝ても疲れが取れない
- なんとなく体が重い
- やる気が出ない
- 理由がはっきりしないのに、ずっとしんどい
病院に行くほどでもない。でも、快調でもない。
この状態のことです。
あなたの体が悪いわけではありません
このだるさはあなたのせいではありません。
18日間ぶんの設計のまま、最後の100秒に放り込まれている。それだけです。



だから、自分を責めても何も変わりません。責める場所が、そもそも違うんです。


今日やることは、ひとつだけです
今日1日で、自分の体を使って動いた時間を思い出してみてください。
歩いた時間です。
駅まで歩いた時間、社内を移動した時間。それを足すと、何分になりますか。
10分でしたか。30分でしたか。それとも、ほとんど歩いていませんか。
その数字を、覚えておいてください。次回、使います。
人類史カレンダーについて、よくある質問
- 人類の歴史600万年を1年に縮めると、1日は何年になりますか?
-
約1万6400年です。1時間が約685年、1分が約11年、1秒が約0.19年になります。
- 農耕が始まったのは、カレンダーでいつですか?
-
12月31日の午前9時24分です。約1万年前にあたります。ここから今日までは、14時間半ほどしかありません。
- スマホがある期間は、1年のうちどれくらいですか?
-
12月31日の夜11時58分20秒から、年が明けるまでの100秒間です。iPhoneの発売から19年、割合にすると0.0003%にあたります。
- 慢性的な心身のダルさの原因は何ですか?
-
この記事の立場では、狩猟採集の時代に作られたスペックと、いまの環境とのズレです。テクノロジーの速度、簡単に手に入る高カロリーの食べ物、体を使わない移動。この3つが100秒のあいだに一気に変わりました。
- なぜ「地球46億年」ではなく「人体600万年」で縮めるのですか?
-
地球のカレンダーは、人類がどれだけ新しいかを示すものです。この記事で知りたいのは人間の体がどの環境で作られたかなので、人間の系統が分かれた600万年を1年に置き換えています。
まとめ|18日間の設計で、最後の100秒を生きています
人類の歴史600万年を1年に縮めると、こうなります。
- いまの形の人間が現れたのが、12月13日
- 農耕が始まったのが、12月31日の午前9時24分
- 江戸時代が始まったのが、夜11時23分
- スマホが登場したのが、夜11時58分20秒
人間のスペックが作られたのは、12月13日から12月31日の朝までの、18日間です。
そして僕らは、その設計のまま最後の100秒を生きています。
この100秒のあいだに起きたズレが、慢性的な心身のダルさになって出てきます。
今日1日で、自分の体を使って動いた時間(歩いた時間)を思い出す。
次回は最終回です
ここまでで、ズレがあることは分かってもらえたと思います。
600万年ぶんの設計と、最後の100秒の環境が、噛み合っていない。
じゃあ、どうしたらいいのか。
次回は、狩猟採集の時代の生活に、少しでも近づける具体的な方法をシェアします。
すぐできることばかりです。
この記事はポッドキャストでも話しています。
「人間のスキルは原始時代から変わっていない」ってどういうこと? 全3回・第2回(2026年8月26日放送)
参考にした情報(すべて2026年8月25日確認)
- Smithsonian Human Origins|サヘラントロプス・チャデンシスと最古のホモ属化石
- Max-Planck-Gesellschaft|約31万5000年前のホモ・サピエンス化石(ジェベル・イルード)
- Britannica|Origins of agriculture(農耕のはじまり)
- The Metropolitan Museum of Art|Uruk: The First City
- 世界遺産 北海道・北東北の縄文遺跡群|縄文時代について
カレンダー上の時刻は、600万年÷365日で筆者が計算したものです。

