僕はこのブログとポッドキャストで、よく脳の話をします。
脳科学が好きなので、読んだ本から知識をシェアしています。
44歳なので、疲労の話もします。
生活の整え方や、ライフハックの話もします。
そのとき、僕はいつも同じ前提の上に立って話しています。
その前提を一言でいうと
人間は狩猟採集時代から進化していない
ということです。
いまの人間のスペックは、文明ができてから作られたものではありません。
もっと昔の、狩猟採集の時代に作られたものです。
そのスペックと、いまの生活とのギャップが、慢性的なしんどさの正体です。
第1回では、この前提の中身と、なぜこの話がピンとこないのかを扱います。
結論から言うと、犯人は学校の歴史の授業です。
僕が話すライフハックは、全部この前提の上にあります
まず、この前提が実際にどう使われているかを書きます。
僕はこの放送で、よくこういう話をします。
- 朝は早く起きましょう
- 夜、布団に入ってからスマホを見るのはやめましょう
- 週末はキャンプに行って、自然の中にいましょう
- 糖質の塊は食べないようにしましょう
- 食べたら動きましょう
- 朝の光を浴びましょう
- 夜は照明を落としましょう
バラバラに見えて、全部が同じ方向を向いています
この7つ、別々のライフハックに見えますよね。
でも、やっていることは1つです。
狩猟採集をしていたころの生活に、少しだけ近づける。
それだけです。
朝の光を浴びるのも、夜の照明を落とすのも、日が昇って日が沈む環境に体を戻す話です。
糖質の塊を避けるのも、食べたら動くのも、食べ物が簡単に手に入らなかった時代の体に合わせる話です。
キャンプなんてのはそれの集大成です。
だから「あなたの意志の弱さじゃありません」と言えます
パパスタダラけているのは、あなたの意志の弱さじゃありません
なぜそう言い切れるのか。
その理由が、この前提です。
スペックは狩猟採集の時代に作られて、そこから変わっていない。
だから、いまの環境と噛み合わないところが出てくる。
前提が抜けると、3日でやめることになります
ここが伝わっていないと、「朝早く起きましょう」だけが残ります。
それだと、3日でやめます。
なぜそうするのかが分からないまま、気合いだけでやることになるからです。
逆に、なぜ朝の光なのかが分かっていると、続きます。
「人間は進化していない」と言われても、ピンとこないのが普通です
実際のところ、ここがピンときていない人はいます。
僕が「人間の性能は、原始時代から変わっていないんですよ」と言っても、こう思う人が多いんです。



いやいや、江戸時代と比べても、今はこれだけ文明が発達している。人間だって、時代に合わせて変わっているでしょう。
たしかにわかりますよね。
僕も、最初にこの話を聞いたときは、そういう感覚になりました。
だからこの記事では、まず「そう思ってしまう理由」のほうを扱います。
人体の600万年のうち、現代的な生活は1%に届きません
理由の前に、数字を置いておきます。
人体には、600万年の歴史があります。
そのうち、現代的な生活になったのは、1%にも届きません。
農耕・江戸・産業革命を、割合にすると
| 出来事 | 何年前 | 600万年に占める割合 |
|---|---|---|
| 狩猟採集をやめ、定住して穀物を食べ始めた | 約1万年前 | 約0.16% |
| 江戸幕府が始まった | 423年前 | 約0.007% |
| 産業革命(機械化と飽食の始まり) | 約250年前 | 約0.004% |
産業革命は、移動も労働も機械に置き換わって、
高カロリーな食べ物が簡単に手に入るようになった時代です。
つまり、いまの僕らが当たり前だと思っている生活は、始まってからまだ250年しかたっていません。
その手前に、599万9750年ぶんの歴史があります。
距離に置き換えると、最後の20メートルです
パーセントだと分かりにくいので、距離にしてみます。
東京から大阪まで、だいたい500キロだとします。
この500キロが、人体の600万年です。
図1:人体の600万年を、東京から大阪までの500キロに置き換えると。
500キロ歩いてきて、最後の20メートル。そこで環境がまるごと入れ替わりました。
人体の600万年のうち、現代的な生活は1%にも届きません。
いまの僕らのスペックは、その1%のなかで作られたものではありません。
それより前の、99%以上の時間のなかで完成しています。
なぜピンとこないのか|犯人は学校の歴史の授業です
ここまで数字を出しても、まだ引っかかる人がいるはずです。なぜか。
僕の答えはこれです。
学校の歴史の授業のせいです。
縄文時代と弥生時代に、何時間かけましたか
思い出してみてください。中学校の歴史の教科書。
最初のほうに、縄文時代と弥生時代が出てきましたよね。
土器の写真があって、竪穴住居の絵があって、貝塚が出てきて。



何時間くらいやりましたか?たぶん、あっという間だったはずです。
そのあとは、ずっと文明の話です。
大和政権があって、律令があって、
平安、鎌倉、室町、戦国、江戸、明治。テストに出るのも、ほとんどそっちです。
学校の歴史は、5つの区切りで組まれています
中学校の歴史は、大きく次の5つの区切りで組まれています。
図2:学校で習う歴史の5区分。原始時代に独立した項目はありません。
気づいたでしょうか。
旧石器時代・縄文時代・弥生時代という区切りは、ここに1つも立っていません。
全部まとめて、いちばん最初の「古代までの日本」の入り口部分に入っているだけです。
出典:中学校学習指導要領・社会科歴史的分野の構成/2026年8月24日確認
縄文時代の年号を、僕らは1つも覚えていません
もう1つ、分かりやすい手がかりがあります。年号です。
1192年、鎌倉幕府。1603年、江戸幕府。1868年、明治維新。
このあたり、いまでも言えるはずです。



では、縄文時代の年号を覚えていますか。言えないですよね
理由は単純です。年号がつく時代しか、テストに出ないからです。
そして年号がつくのは、文字が発明されて記録が残るようになってから。
文字より前は、そもそも試験の形になりません。
「いい国つくろう」で覚えた1192年は、いまの教科書では1185年になっていることが多いそうです。
習ったことが、あとから変わることはあります。ただし変わるのは、いつも文明側の話です。
結果、頭の中にこういう地図ができあがります
何年も教育を受けると、こういう地図ができます。
- 人間の歴史 = 文明の歴史
- 原始時代 = その手前にちょっとだけあった準備期間
この地図を持っていれば、「文明が変わったのだから人間も変わったはず」という結論になります。
推論としては正しいんです。
正確に言うと、間違っているというより縮尺がおかしい。
図3:教科書のページの配分と、実際に人間が過ごした時間の配分。
教科書のページの配分と、実際に人間が過ごした時間の配分は、まったくの別物です。
授業では数ページしか出てこない縄文時代と、その前の時代。そこに、人間は圧倒的に長くいました。


30万年と1万年、どちらがスペックを作るのに十分か
具体的な時間軸は第2回でまとめて出しますが、1つだけ先に置いておきます。
- いまの形の人間(ホモ・サピエンス)が現れたのは、およそ30万年前
- 畑を耕して食べ物を作るようになったのは、およそ1万年前
30万年と、1万年。
どちらのほうが、人間のスペックを作るのに十分な時間があると思いますか。
いまの僕らのスペックとは、具体的に何か
- 何を「おいしい」と感じるか
- 何にストレスを感じるか
- どういうときに眠くなるか
- 何人までなら人間関係を保っていられるか
甘いものや脂っこいものをおいしいと感じるのは、それが手に入りにくかったからです。
日が沈むと眠くなるのは、明かりがたき火しかなかったからです。
どれも、狩猟採集の環境で決まったものです。


そのギャップが、しんどさになって出てきます
現代人のスペックは文明ができたあとにチューニングされたものではありません。
その前の、長い長い時間のあいだに完成しています。
そして僕らは、そのスペックのまま、まったく違う環境に放り込まれている。
そのギャップが、しんどさになって出てくる。



これが、僕がいつも話している前提の中身です。


このシリーズの進み方
| 回 | 扱うこと |
|---|---|
| 第1回(この記事) | 前提の中身と、なぜピンとこないのか(学校の授業) |
| 第2回 | 実際の時間軸。600万年を1年のカレンダーに縮めるとどうなるか |
| 第3回 | 狩猟採集の時代の生活に少しでも近づける具体的な方法 |
今日やることは、ひとつだけです
中学校の歴史の教科書を思い出してください。
そして、縄文時代のページの厚さと、
江戸時代以降のページの厚さを、頭の中で比べてみてください。
それだけです。実物はいりません。記憶で大丈夫です。
その厚さの差が、第2回でひっくり返ります。
よくある質問
- 人間は進化していない、というのは科学的に正しいのですか?
-
まったく変化していない、という意味なら正しくありません。農耕が始まったあとにも、遺伝子の変化は起きています。この記事で言っているのは、基本的な性能が文明のあとで作り直されたわけではない、という意味です。詳しくは第3回で扱います。
- なぜ学校では原始時代をあまり扱わないのですか?
-
文字による記録が残っていないためです。年号がつくのは記録が残ってから。テストの形にしやすいのも記録が残ってからです。授業時間の配分は資料の量に引っ張られるので、実際の時間の長さには比例しません。
- 人間のスペックとは、具体的に何を指していますか?
-
何をおいしいと感じるか、何にストレスを感じるか、どういうときに眠くなるか、何人までなら人間関係を保てるか。この記事ではこの4つを指しています。
- 現代的な生活は、人体の歴史の何パーセントですか?
-
600万年のうち、農耕以降が約0.16%、江戸時代以降が約0.007%、産業革命以降が約0.004%です。いずれも1%には遠く届きません。
- 狩猟採集の時代というのは、いつからいつまでですか?
-
ホモ・サピエンスが現れた約30万年前から、農耕が始まる約1万年前までを指しています。この年数の意味は、第2回で数字にして出します。
まとめ|地図の縮尺を、いちど疑ってみませんか
人間は進化していないという話がすんなり入ってこないのは、理解力の問題ではありません。
僕らが学校で受け取った「人間の歴史」の地図が、縮尺のおかしいまま渡されているからです。
その地図を信じている限り、「文明が発達したから人間も変わった」という結論にしかなりません。
そして、その結論のままだと、朝早く起きるのも、夜スマホを置くのも、気合いの話になってしまいます。
理由が分かっていれば、続きます。
第2回では、実際の時間軸を数字で出します。
600万年を1年のカレンダーに縮めたら、スマホがある期間は何分だったのか。
縄文時代のページと、江戸時代以降のページの厚さを、記憶で比べてみる。それだけです。
この記事はポッドキャストでも話しています。
「人間のスキルは原始時代から変わっていない」ってどういうこと? 全3回・第1回(2026年8月25日放送)

