NISAの口座を開いたあと、すぐに次の壁がやってきます。
「無数にある投資信託の中から、結局どれを買えばいいのか」という壁です。
先に結論を書きます。
NISA初心者が選ぶべき商品は、全世界株式オールカントリーかS&P500の2択です。
この2つ以外を最初に選ぶ理由は、ほとんどありません。
ただし、本題はここからです。
その2つが「何なのか」を自分で説明できないまま買うことは、投資ではありません。
この記事では、筆者がeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)に全額を投じている理由と、その裏側にある3つのリスクを、数字だけで並べます。
- 選択肢の絞り方:NISA初心者はオールカントリーかS&P500の2択でいい理由
- いちばん危ないこと:他人の推奨で買う「思考停止」がなぜ損につながるのか
- 筆者の判断:オールカントリーではなくS&P500を選んだ4つの理由
- コストの構造:eMAXIS Slimの信託報酬が下がり続ける仕組み
- 受け入れた代償:米国集中・為替・下落幅という3つのリスク
※この記事は、夏休みの特別シリーズ「楽天証券でつみたてNISAを始めるまで」全6回の第4回です。
投資は自己責任です。ここに書いてあるのは、筆者が自分で調べて、自分で考えて、自分で選んだ結果でしかありません。
読み終わったあと、必ず自分で公式サイトを開いて、自分の頭で確かめてください。
結論|NISA初心者が選ぶべきはオールカントリーかS&P500の2択
もう一度、結論から書きます。
投資を始めたばかりの人が選ぶべき商品は、全世界株式オールカントリーか、S&P500の2つです。
金融庁がつみたて投資枠の対象として認めている商品は、これ以外にも多数あります。
それでも、長期的な運用実績と、運用コストの低さという2つの物差しで絞り込むと、最終的にこの2択に落ち着きます。
ネットの記事でも動画でも、「とりあえずオールカントリーかS&P500を買っておけばいい」という言葉を必ず目にするはずです。
その言葉自体は、間違っていません。
パパスタただ、その言葉をそのまま受け取って買うのが、いちばん危ない。
他人の推奨だけで投資商品を買うのは思考停止です
ここまでで、選ぶべき商品は2つに絞られました。
問題は、その2つを「なぜ選ぶのか」を自分の言葉で説明できるかどうかです。
オールカントリーとは何か。S&P500とは何か。
この2つを自分で調べて、自分で理解しておくこと。
これが、商品選び以上に大切な作業です。
理由を説明できないまま、他人がすすめたという理由だけで買う。
これは投資ではありません。ただの思考停止です。
大切なお金を、思考停止のまま投資に回し続ける行為は、明確にNGだと考えています。
なぜNGなのか。
答えははっきりしています。
相場が暴落したときに、中身の構造を理解していない人は、必ずパニックになるからです。
自分が持っている商品が何でできているのか分からない。
なぜ下がったのかも分からない。
その状態で画面の数字が赤くなれば、人は耐えられません。
そしていちばん安いところで売って、損を確定させます。



下がったから怖い、ではなくて。
中身が分からないから怖い、なんですよね。
だからこの記事では、筆者が選んだ理由と、その商品が抱えるリスクの両方を、客観的な事実と数字だけで書きます。
納得できなければ、選ばなければいい。それでいいと思っています。
筆者がオールカントリーではなくS&P500を選んだ4つの理由
ここまでは「2択でいい」という話でした。
ここからは、筆者がその2択のうちS&P500を選んだ理由を書きます。
根拠は、次の4つの事実です。
理由1:世界経済の中心はアメリカであるという事実
まず、公平に書きます。
リスクの大きさだけで比べれば、オールカントリーのほうが低い構造です。
日本、ヨーロッパ、新興国に資金が分かれているからです。
アメリカの経済が不況になっても、他の国に置いた資金がある。
これは事実として、S&P500にはない強みです。
それでも筆者は、「アメリカだけが沈む」という事態は起こりにくいと判断しました。
アメリカの経済が沈むときは、世界経済全体が同時に沈む構造になっているからです。
世界経済を牽引しているのがアメリカである以上、いちばん成長力の高い市場に直接お金を置く。
それが合理的だと考えました。
理由2:S&P500には構成銘柄の自動的な入れ替え機能がある
S&P500は、アメリカの株式市場に上場している企業のうち、代表的な500銘柄の時価総額に連動するよう設計された指数です。
ここが重要です。
この500社は、固定されていません。
3か月ごとに見直しが行われます。
時価総額や連続黒字といった厳しい基準を満たせなくなった企業は、指数から外されます。
そして、伸びている新しい企業が入ってきます。
アメリカは超競争社会です。
評価が落ちれば、どんどん入れ替わる。
つまり放っておいても「そのときの最強の500社」に投資し続けられる仕組みになっています。



自分で銘柄を選び直さなくていい。
ここが、初心者にとっていちばん大きい。
理由3:米ドル建てで資産を確保できるという意味
日本円という1つの通貨だけで資産を持つこと。
これも立派な集中投資であり、それ自体がリスクです。
S&P500を買うということは、世界でいちばん影響力のある通貨、つまり米ドルの資産を持つということです。
日本円の価値が下がったときの、備えになります。
理由4:オールカントリーも過半数が米国株である事実
最後は、名前と中身のズレの話です。
「全世界株式オールカントリー」という名前でも、2026年6月末時点で、構成銘柄のうちアメリカ企業が占める割合は63.6%に達しています。
世界中に分散していると言いながら、実態としては資金の過半数がアメリカ企業に入っている。
それなら最初から、成長力の高いアメリカの500社に絞ったほうが効率がいい。
そう判断しました。
| 比較項目 | オールカントリー | S&P500 |
|---|---|---|
| 投資先の国 | 日本・欧州・新興国を含む全世界 | アメリカのみ |
| 米国の比率 | 63.6%(2026年6月末) | 100% |
| 通貨 | 米ドル・ユーロ・英ポンド・円・台湾ドルなど | 米ドル100% |
| カントリーリスクの分散 | あり | なし |
| 為替変動の影響 | 緩和される傾向 | 最大レベルで受ける |
S&P500でeMAXIS Slimを選ぶ理由は信託報酬の構造にあります
ここまでで、S&P500を選ぶ理由は出そろいました。
ただし、話はもう一段あります。
同じS&P500に連動する商品でも、運用する会社によって別々の商品が存在します。
「S&P500だから同じ」ではありません。ここは要注意です。
筆者がeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を選んだ理由は2つ。
運用コストである信託報酬の低さと、規模が大きいこと自体がコストを下げる仕組みです。
圧倒的な低コストと受益者還元型信託報酬の仕組み
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の信託報酬は、年率0.08140%以下という極めて低い水準に設定されています。
さらにこの商品には、「受益者還元型信託報酬率」という仕組みが組み込まれています。
名前は難しいのですが、中身は単純です。
ファンドに集まったお金の総額が一定のラインを超えるたびに、適用される信託報酬率が段階的に引き下げられるという構造です。
具体的には、純資産が10兆円を超えた部分には、年率0.07568%という最低水準が適用されます。
そしてこのファンドは、2026年1月に純資産10兆円を突破しました。



規模が大きくなると、こちらが払うコストが下がっていく。
買っている側からすると、これはかなり効きます。
つまり、運用規模の拡大がそのままコスト削減につながるスケールメリットが、すでに機能している状態です。
S&P500に全額投資するときの3つのリスク
コストが極限まで低いという話をしてきました。
ここからは、その裏側です。
S&P500に全額を投じるという選択には、逃げられないリスクが3つあります。
この3つを他人に説明できないうちは、この商品を買うべきではありません。
リスク1:米国への集中と特定セクターへの偏重
S&P500は、アメリカの企業だけで構成されています。
ですから、アメリカの経済成長が止まったとき。
あるいは情報技術、通信サービス、一般消費財といった特定の産業に壊滅的な問題が起きたとき。
そのダメージを、直接そのまま受けます。
日本、イギリス、フランス、台湾、カナダ、新興国まで投資先を広げるオールカントリーと比べると、国の分散は一切行われていない状態です。
リスク2:100%米ドル建てによる為替リスク
S&P500の構成銘柄は、100%が米ドル建ての資産です。
そしてeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は、原則として為替ヘッジを行いません。
つまり、ドル円の動きをまるごと受けます。
アメリカの株価自体が上がって利益が出ていても、急激な円高が進めば、日本円に直したときのリターンは大きく圧縮されます。場合によっては、マイナスに転落します。
オールカントリーなら、投資先が米ドルだけでなくユーロ、イギリスポンド、日本円、台湾ドルなど複数の通貨に分かれています。
特定の通貨が動いたときの影響は、そのぶん薄まります。
S&P500を選ぶということは、為替の変動リスクを最大レベルで引き受けると決めることと同じです。
リスク3:CAPEレシオの割高感と過去の下落幅
株価が企業の利益に対してどれくらい割高かを示す指標に、CAPEレシオがあります。
2026年3月時点で、S&P500のCAPEレシオは36.53を記録しています。
過去の歴史的な平均値は17.35です。
平均を19.18も上回っている、というのが客観的な数字です。
そしてS&P500は、ずっと上がり続けるわけではありません。
直近では2022年に、19%を超える下落を記録しています。
仮に100万円を投資していたなら、資産が一時的に81万円まで目減りする計算です。
この値動きに耐えられずに売ってしまうリスクは、常に抱え続けることになります。



下がったときに売らない自信があるか。
買う前に、そこだけは自分に聞いておきたい。
オールカントリーとS&P500を自分で確かめる4ステップ
ここまで読んで、筆者の判断は分かったと思います。
ただし、これは筆者の結論であって、あなたの結論ではありません。
買う前に、次の順番で自分の頭を通してください。
商品名で検索して、運用会社の公式ページから交付目論見書を開きます。ブログや動画ではなく、まず一次情報にあたること。ここが出発点です。
どの国に、どの通貨で投資しているのかを確認します。オールカントリーなら、米国が何%を占めているかを自分の目で見てください。
年率何%か、そして純資産がいくらを超えたら下がるのかを書き出します。同じS&P500でも運用会社によって違うので、必ず比べます。
国の集中、為替、下落幅。この3つを、誰かに説明するつもりで言葉にしてみてください。言葉にできたときが、買っていいタイミングです。
NISA初心者によくある疑問|オールカントリーとS&P500のQ&A
- NISA初心者はオールカントリーとS&P500のどちらを選べばいいですか?
-
どちらでも構いません。長期の実績と運用コストで絞ると、最終的にこの2つに落ち着くからです。
選び方の基準は1つだけです。米国1カ国に集中することと、為替リスクを最大限に受けることを受け入れられるならS&P500。そこに不安があるならオールカントリーが論理的な正解になります。 - eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の信託報酬はいくらですか?
-
年率0.08140%以下です。
さらに受益者還元型信託報酬率という仕組みがあり、純資産のうち10兆円を超えた部分には年率0.07568%が適用されます。このファンドは2026年1月に純資産10兆円を突破しています。 - S&P500は為替の影響をどれくらい受けますか?
-
まるごと受けます。
構成銘柄は100%が米ドル建てで、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は原則として為替ヘッジを行いません。株価が上がっていても、急激な円高が進めば円換算のリターンは大きく圧縮されます。 - オールカントリーなら米国リスクを避けられますか?
-
完全には避けられません。
2026年6月末時点で、オールカントリーの構成銘柄のうち米国企業が占める割合は63.6%です。分散はされていますが、資金の過半数はアメリカに入っています。 - 今のS&P500は割高ですか?
-
割高かどうかを断定することはできません。
ただし客観的な数字として、2026年3月時点のCAPEレシオは36.53で、歴史的な平均値17.35を19.18上回っています。この数字をどう受け取るかは、自分で判断する部分です。
まとめ|理由とリスクを言語化できてから始めればいい
今日の結論をもう一度書きます。
NISA初心者は、オールカントリーかS&P500を選べばいい。
ただし、中身とリスクを自分で調べずに他人の推奨で買うことは、単なる思考停止であり、明確にNGです。
筆者はS&P500に全額を投じています。
それは、アメリカの成長力、銘柄が自動で入れ替わる仕組み、米ドル資産の確保という3つの理由と、信託報酬のスケールメリットを評価したうえで、米国集中・為替・下落幅という3つのリスクを理解して、受け入れると決めたからです。
もし、米国1カ国に集中することや、為替リスクを最大限に受けることに不安を感じるなら。
オールカントリーを選ぶことが、あなたにとっての論理的な正解です。
- 公式ページを開く:オールカントリーとS&P500の交付目論見書を、自分で1回だけ開く
- 1つだけ書き出す:中身の国・通貨・信託報酬のうち、気になった数字を1つメモする
- 声に出す:なぜその商品を選ぶのかを、ひとことで言えるか試す
自分の選択の理由とリスクを言葉にできる状態になって、はじめて投資を始める条件が整います。
逆に言えば、そこまでは急がなくていいということです。
次回は、口座を開いて商品を決めたあと、毎月いくら積み立てるべきかを書きます。
投資金額は感情で決めるものではありません。収入と支出の引き算で、論理的に出す手順を示します。
このシリーズのほかの回もどうぞ






今日のポッドキャスト
夏休みの特別シリーズ「楽天証券でつみたてNISAを始めるまで ステップバイステップ」全6回
第4回「NISA初心者が選ぶべき商品はオールカントリーかS&P500の2択|筆者がeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)へ全額投資する理由と3つのリスク」
この記事で参照した公式・一次情報(2026年8月7日確認)
- 金融庁 つみたて投資枠 対象商品一覧
- 松井証券 S&P500とは(指数の仕組み)
- Business Insider Japan オールカントリーの構成比に関する記事
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の信託報酬に関する記事
- 時事通信 純資産10兆円突破と受益者還元型信託報酬に関する記事
- Forbes JAPAN CAPEレシオと2022年の下落に関する記事
※投資は自己責任です。この記事は特定の商品の購入を推奨するものではありません。数値は上記の各出典を2026年8月7日に確認した時点のものです。最新の情報は、必ず運用会社と金融庁の公式ページでご確認ください。

