今や投資の世界で常識とされるS&P500への積立投資。
しかし今、巨額のAI投資競争により平和な時代は終わりを迎えようとしています。
私も積み立てNISAでS&P500にフルベットしている一人として、
投資インフルエンサー五月さん(片山晃さん)のnoteシリーズを読み、
初心者にも分かりやすく解釈してみました。
全10回の連載で、米国株式市場の”今”を解説する第8回です。
これまでのビッグテック平和共存時代とは
- 各社が自分の得意分野で圧倒的な地位を確立
- 無益な全面戦争を避けることで利益率を維持
- この平和がS&P500の高リターンを支えてきた
ビッグテックが築いた棲み分けの世界
ビッグテック(Big Tech)――Apple、Microsoft、Google(アルファベット)、Amazon、Meta(旧Facebook)といった巨大IT企業たちは、これまで広大なインターネット空間で絶妙な棲み分けを実現してきました。
基本ソフト(OS)やオフィスソフトはMicrosoft。
スマートフォンはApple。
ネット検索と広告はGoogle。
ネット通販(EC)はAmazon。
SNS(交流サイト)はMeta。
一つの大陸をいくつかの大国が統治しているようなイメージです。
新しい市場や隣接分野では小競り合いも起きました。
例えばFacebookが簡易検索機能を試したり、GoogleがSNS「Google+」を作ったり。
でも互いが共倒れするような全面戦争には至りませんでした。
それぞれが着実に領土を広げつつも、正面から殴り合わない。
これが「平和の配当」です。
S&P500投資家が享受してきた恩恵
この平和な時代こそ、S&P500投資家がこれまで享受してきた高リターンの正体でした。
ビッグテック各社が互いに無益な競争を避けつつ、
自分たちの利益(EPS=1株当たり利益)を着実に積み上げていく。
その未来図が今の高い株価(PER=株価収益率)に完全に織り込まれています。
引用元:ソフトバンクグループ公式発表より
「Stargate Projectは、OpenAIのために新たなAIインフラストラクチャを米国内で構築するため、今後4年間で5,000億ドルを投資することを計画している新会社です」
OpenAIという”ゲームチェンジャー”の登場
- 既存の収益源を持たず、守るべき領土もない
- AGI(汎用人工知能)獲得に全てを賭ける姿勢
- 資金が続く限り撤退しない「AGI or DIE」の戦略
共存の時代を終わらせる存在
しかし、この共存と繁栄の時代に終わりを告げる存在が現れました。
それがサム・アルトマン率いるOpenAIです。
多くの市場関係者がようやく認識し始めていますが、
ビッグテックの経営者たちは今起きているAIへの巨額投資を「自社の生存を賭けた戦い」と考えています。
なぜか。
彼らは最終目標である汎用人工知能(AGI=人間のようにあらゆることができるAI)を手に入れた者が
世界のすべてを制するとまで思い詰めているからです。
歴史が教える”敗北=消滅”の恐怖
これはある種の妄想にも聞こえますが、そう信じてしまう心理は理解できます。
何しろ彼らはインターネット産業の興亡を肌で知っている世代です。
例えば検索エンジンを巡る争い。
かつて覇権を握っていたYahoo!、Lycos、Infoseekといった大手がほとんど消え去り、
Googleだけが残ったという歴史を直に見てきました。
メタバースの教訓
数年前に「メタバース」ブームが起きた時も同じでした。
もし仮にメタバース(仮想空間)が次のウェブや次のアプリになるプラットフォームとなってしまった場合、
自社ビジネスが致命傷を負うことを恐れたのです。
あの時最も果敢に賭けに出たのは、
自社の基盤が脆弱(SNSしか持たない)だったMeta(Facebook)でした。
その動き自体が、危機感の大きさを物語っています。
メタバースですらそうだったのです。
ましてやテクノロジー進化の最終地点とも言われるAGI(人工汎用知能)を巡る争いとなれば、
ビッグテック首脳陣の緊張度合いは比ではありません。
敗北=死を意味すると本気で信じている限り、
戦力を温存しておく理由はなくなります。
総額5,000億ドルという前例なき投資戦争
- 2025年1月に総額5,000億ドル規模の計画を発表
- 4,000億ドルもの資金調達に成功
- NVIDIAも最大1,000億ドルを投じる資本提携
スターゲート計画の衝撃
もっとも、ビッグテックも株主のものですから好き勝手はできません。
規律ある投資の枠を多少破るにしても、
さすがに自社の利益が本格的に溶け始めるほどの「焼け野原の戦い」にはならないだろう。
市場参加者の多くはそう高をくくっていたはずです。
実際、もし戦いが上場企業同士(ビッグテック同士)に留まっていたなら、
彼らはある程度暗黙の了解で一線を越えない可能性が高かったでしょう。
しかし、2025年に入って状況は一変しました。
年初の大型発表
引用元:Impress Watchより
「OpenAIやソフトバンクグループらは、米国に今後4年間で5,000億ドル(約77兆円)を投資し、OpenAIのために新たなAIインフラストラクチャを構築する新会社『Stargate Project』を開始した」
年初、OpenAIは総額5,000億ドル規模の「スターゲート計画」を発表。
4,000億ドルもの資金調達に成功しました。
さらにNVIDIAも最大1,000億ドル(約15兆円)を投じる資本提携を結び、協力することになりました。
資金力が可能にする長期戦
OpenAIに5,000億ドルの評価額で投資した人々が本当にリターンを得られるのかどうかは定かではありません。
ただ、足下の売上は着実に伸びており、
1兆円規模とも言われる赤字額が仮に倍増したとしても、
現状集まっている資金があれば最低でも数年間は持ちこたえられるでしょう。
裏を返せば、その期間中ビッグテック各社も先の見えない投資競争に付き合わされるということです。
競争から途中で降りることのリスク(自社ビジネスが将来完全に潰えるリスク)を
各社CEOたちが本気で恐れている限り、最後まで走り切る以外の選択肢はありません。
ビッグテックが資金調達を加速させる現実
- Oracle、Meta、Google、Amazonが社債を相次ぎ発行
- 2025年の設備投資は各社とも数百億ドル規模
- 長期戦への備えを本格化
相次ぐ大型社債発行
サム・アルトマン(OpenAIのCEO)がレイズ(賭け金つり上げ)するたびに、他の巨人たちはコール(同額を賭ける)せざるを得ない。
そうして積み上がったチップ(投資額)の山は天井知らずです。
引用元:日本経済新聞より
「メタとオラクル、アルファベットの3社で9月以降、計655億ドル(約10兆円)のドル資金を確保した」
実際、直近になってOracle、Meta、Google、Amazonが相次いで大型社債を発行。
その合計額は数百億ドル規模に上りました。
各社とも長期戦への備えを始めているのです。
2025年の巨額投資計画
ビッグテック各社の2025年AI関連投資額は以下の通りです。
- Microsoft: 約800億ドル(約12兆円)
- Amazon: 約1,000億ドル(約15兆円)
- Google: 約750億ドル(約11.5兆円)
- Meta: 600億~650億ドル(約9兆~10兆円)
合計すると3,000億ドルを超える巨額です。
ChatGPTを生んだ企業の「撤退なき戦略」
- 他に収益源となるプロダクトを持たない
- 守るべき既存ビジネスがない
- 「AGI or DIE(AGIか死か)」の覚悟
既得権益を持たない強み
ChatGPTを世に送り出したOpenAIは他に収益源となるプロダクトを持たず、守るべき既得権益もありません。
「撤退」の二文字はなく、資金が続く限り戦うでしょう。
まさに「AGI or DIE(AGIか死か)」の姿勢です。
競合のビッグテックにとってこれほど厄介な敵はいません。
既存の秩序を破壊するために現れたジョーカー(切り札)のような存在。
それがAI革命を牽引するOpenAIです。
その動向次第では、ビッグテック各社は信じられない量の出血(巨額投資)を余儀なくされる恐れがあります。
鋭い人ならこう思うはず「OpenAIが入れば解決では?」
- これまでの放送で説明した通り、S&P500は常に入れ替わる
- ならばOpenAIが成功すれば、ビッグテックに代わって入るのでは?
- 結果的にS&P500は上がり続けるのでは?
S&P500は優秀な企業が入れ替わる仕組み
ここまで読んで、鋭い方はこう思われたかもしれません。
OpenAIが業績を伸ばせば、他のビッグテックが沈んでもOpenAIがS&P500に入って、結果的にS&P500は上がるんじゃないの?
これは非常に本質的な疑問です。
しかし残念ながら、答えはノーなんです。
OpenAIはS&P500に入れない理由
- OpenAIは現在、未上場の民間企業
- S&P500は上場企業のみが対象
- どんなに成功しても、上場しない限り対象外
S&P500は、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している企業の中から選ばれる指数です。
具体的な採用基準には以下のようなものがあります。
- 時価総額が約131億ドル(約1兆8,000億円)以上
- 4四半期連続で黒字
- 十分な流動性(取引量)があること
- 浮動株比率が50%以上
OpenAIは現在、未上場の民間企業。
つまり、どんなに成功しても、上場しない限りS&P500には入れないのです。
OpenAIの上場予定は?
- 2025年10月に組織再編を完了し、上場可能な体制に
- 報道では2026年後半~2027年にIPOの可能性
- 評価額は1兆ドル(約150兆円)規模になる見込み
実は、OpenAIは2025年10月に大きな組織変更を行いました。
非営利団体から営利企業へ再編し、将来的に上場できる体制を整えたのです。
報道によれば、2026年後半から2027年にかけて、1兆ドル(約150兆円)規模のIPO(新規株式公開)を計画しているとされています。
もし実現すれば、史上最大のIPOとなります。
ただし、OpenAIのCFO(最高財務責任者)は「今のところIPOの予定はない」と公式に発言しています。
つまり、上場するかどうか、いつするかは、まだ誰にも分からないのが現状です。
今は「移行期間」という厳しい時期
- ビッグテックは巨額投資で利益率が低下
- でもOpenAIはまだS&P500に貢献していない
- この「移行期間」が数年続く可能性
つまり、こういうことです。
今、ビッグテックは巨額の投資でお金を使いまくっています。
でもOpenAIはまだS&P500に入っていない。
だから、ビッグテックの利益は減るけど、OpenAIの成長はS&P500に反映されない。
これが「移行期間」です。
もし将来、OpenAIが上場してS&P500に採用されれば、また話は変わるかもしれません。
しかしそれまでの数年間は、S&P500投資家にとっては厳しい時期が続く可能性があるということです。
AI戦争の勝者は誰か?武器商人たちの繁栄
- NVIDIAとTSMCが最大の受益者
- 半導体製造装置メーカーにも波及
- 日本企業(東京エレクトロン、アドバンテストなど)も恩恵
半導体サプライチェーンへの恩恵
彼らの流す血で喉を潤すのはNVIDIAやTSMC、そのほか関連する半導体サプライチェーン企業群でしょう。
引用元:NVIDIA公式ブログより
「データセンターや電力容量を含む本導入を支援するため、NVIDIAは新しいNVIDIAシステムの導入に合わせて、OpenAIに最大1,000億ドルを投資する意向です」
巨人たちの前例なき戦争を支える武器商人たちは、
AGIが実現するかOpenAIが資金調達に失敗するまで忙しい日々が続くことになりそうです。
特に日本企業では以下のような企業が恩恵を受けています。
- 東京エレクトロン(半導体製造装置)
- アドバンテスト(半導体検査装置)
- SCREENホールディングス(半導体洗浄装置)
- レーザーテック(半導体検査装置)
- 信越化学工業(半導体素材)
S&P500投資家が知っておくべきこと
- S&P500は万能ではないが、凡人には今も最適解
- ビッグテックの利益率圧迫リスクを認識する
- 「神話」として盲信せず、冷静な判断を
リスクを理解した上での投資判断
私は投資について無知なので大勢の方と同様に思考停止でS&P500にフルベットしています。
現在とても資産が増えているのでびっくりしている状態です。
今回の内容を読んでも、
S&P500は万能じゃないけれど、凡人には今も最適解だと思っています。
でも「神話」として盲信するのは危ないから、
こういうリスクを知っておくことが大切です。
AI投資がもたらす変化
- ビッグテックの高い利益率が圧迫される可能性
- 設備投資の急増により短期的なフリーキャッシュフローが減少
- 長期的にはAIビジネスからの収益化が期待される
ビッグテックのAI投資競争は、短期的には利益を圧迫します。
しかし2~3年後にAI対応製品やサービスが市場に投入され、
収益が生まれ始めれば状況は変わるかもしれません。
重要なのは、この変化を理解した上で投資を続けることです。
まとめ:変化の時代を生き抜くために
OpenAIの登場によって始まったビッグテックのAI戦争。
これまでの「平和の配当」は終わりを告げ、
前例のない巨額投資競争の時代に入りました。
総額5,000億ドル規模のスターゲート計画、
NVIDIAの1,000億ドル投資、
そしてビッグテック各社の相次ぐ資金調達。
すべてが、この戦いが本気であることを物語っています。
S&P500への投資を続ける私たちにとって、この変化を理解することは重要です。
神話を盲信せず、リスクを知った上で冷静に判断する。
それが、変化の時代を生き抜く鍵となるでしょう。
次回予告
第9回では、この史上最大規模とも言える設備投資競争が株式市場にどんな影響を及ぼすのか、今後の展開を考えてみます。
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